トランス脂肪酸は心臓疾患などのリスク要因となり得る?
「植物性であるマーガリンは健康的で、動物性のバターは健康に良くない」と思い込んでいる人に対しては、常識を覆されるような出来事です。「マーガリンの危険性」を指摘する記事が2005年8月5日週刊朝日に掲載されました。
週刊朝日によると、学術会議出席のために、2年ぶりに米国に出張したある大学教授が、宿泊先のホテルで奇妙なことに気づきました。これまで、バターかマーガリンかを選択できるようになっていたのに、バターだけしかなくて、マーガリンが姿を消していたのです。米国では政府が、マーガリンの規制に乗り出していて、米食品医薬品局(FDA)が、マーガリンに含まれる脂肪酸の一種である「トランス脂肪酸」が心筋梗塞のリスクを高めるとして規制に乗り出しており、2006年1月1日から食品などにトランス脂肪酸の含有量表示を義務化したのです。このような政府の動きを見て、ホテルなどが出さなくなったのです。
トランス脂肪酸を規制する動きは米国だけでなく世界的な傾向です。(国際脂肪酸・脂質学会は、99年にトランス脂肪酸の摂取量を一日2グラム未満にするようにという勧告を行い、また、世界保険機構(WHO)は、摂取エネルギーの1%未満(おおよそ一日摂取量は2グラム強)にするように勧告しました。)カナダでは、すでに05年からトランス脂肪酸の含有量の表示が義務化されましたし、デンマーク政府も、トランス脂肪酸を食品に含まれる総油脂量の2%以下にするよう勧告しています。また、ヨーロッパの業界団体では、家庭用マーガリンのトランス脂肪酸 含有量を1%以下、業務用マーガリンは5%以下にする方向で検討が進んでいます。
日本における1世帯あたりのマーガリン年間消費量は、約1.8kgという報告があります。(日本務庁 「1997年家庭調査報告」より) これはバター消費量の約3倍であり、1960年代にはマーガリンの売上げが既にバターを抜いて今日に至ります。マーガリンは、家庭用だけでなく、業務用マーガリンやショートニングにもトランス脂肪酸が含まれるため、食品としては市販のパン、ケーキ、フレンチフライ、ドーナッツ、クッキーなどを通じてトランス脂肪酸を摂取してしまいます。
トランス脂肪酸は脂肪酸の一種で、パンやケーキを作るときに必要なマーガリンやショートニングには0.1〜40%含まれ、家庭で使われるソフトマーガリンの 油脂中には平均10%程度含まれています。「トランス脂肪酸」は、菓子パンやケーキ、クッキーなどにも沢山含まれているので、注意していないと、2グラムとされる一日最大摂取量を簡単にオーバーしてしまいます。また、フライポテトなどをサクッと口当たりよくするため、外食産業ではトランス脂肪酸を含んだ油を広く使っているが、子供たちに悪影響が出るのではないかと心配」している専門家もいます。
トランス脂肪酸の危険性に関して、金城学院大学薬学部の奥山治美教授(予防薬食学)らが、遺伝的に高血圧になり脳卒中を起こしやすいネズミに、油脂を10%含む餌を与えて、生存期間を調べたところ、(油脂の成分を変えて調べた)トランス脂肪酸を沢山含む餌で育てられたネズミが早死にすることtがわかったという報告もあります。
トランス脂肪酸の危険性について、アメリカのメリーランド大学 M・エニグ博士や米国神経学会 の専門家は以下のように述べています。
◆心臓疾患のリスクを高める◆「トランス脂肪酸」は、細胞膜の性質を変化させる。
◆免疫機能を低下させる。
◆酵素の働きを妨げる。
◆若い女性の調査では、彼女らが好んで食べている220種類の食品にトランス脂肪酸が含まれている。
◆骨の発達に影響を及ぼす。
◆85,000人の看護婦を調べたハーバード大学の調査では、トランス脂肪酸の摂取の多い者ほど心臓病が多くなっていた。
◆「トランス脂肪酸」は、悪いコレステロールを増やし、よいコレステロールを減らす。
◆アメリカ人のとる脂肪の平均20%はトランス脂肪酸になっている。
◆「トランス脂肪酸」は、筋肉細胞を変化させ、肥満を招く。
◆痴呆の引き金になる。
◆体の脂肪細胞の大きさ、数に変化を与える。(これも肥満の原因になる)
◆「トランス脂肪酸」は、母乳中の乳脂肪分を減らし、母乳の質を低下させる。
日本でも「トランス脂肪酸」の危険性をもっと認識し、いち早く対策と表示の義務付けをする必要があるのです。