結核が減った理由
日本人の平均寿命が世界最高水準であることは、疑いがありません。
その理由には様々ありますが、中でも「不治の病」といわれていた、結核や腸チフスなどの病原性感染症が激減したことがあります。
そこで問題なのが、「なぜ結核を始めとする病原性感染症が減少したのか?」ということです。
多くの人は、医療の進歩、そして抗生物質が発見されたことによって結核が撲滅したと思っています。
ですが、結核の抗生物質が発見されたときには、すでに結核は減少しつつあったのです。
日本でも、江戸時代に結核が大流行した時期がありましたが、そのときには当然まだ抗生物質などありません。
そして、抗生物質がある現在でも、食糧事情の悪い発展途上国では結核での死者が後を絶ちません。
つまり、結核には抗生物質以外の要因が関わっているということなのです。
「人間と適応」の著書、ルネ・デュボスによると、細菌による病気の流行は、社会的悲惨さにこそ大きな原因がある、つまり、「戦争、飢餓、および悪疫が一緒にやってくる」と述べています。そして、どこの国でも戦争などの社会的悲惨さが過ぎれば、細菌性の疾患が減少していることを明らかにしています。
つまり、現在では、結核をはじめとした細菌性感染症が減少した理由として、社会的悲惨さの解消によって改善された衛生面(飲料水、汚物処理、安全なミルクなど)、あるいは栄養改善、精神的安定などが主たる理由となっていることがわかっています。
ですが、医療従事者を始め多くの人の中に、「結核=抗生物質」の図が根強く残っており、その結果血眼になって糖尿病や心臓病、ガンにおける特効薬を発見しようとする姿勢に結びついています。
結核に戦争や飢餓といった要因が関わってきたのと同様、心臓病やガン、糖尿病にもライフスタイルが大きく関わっています。特効薬だけに目を向けるのではなく、食生活・運動・睡眠などを包括的に考えることが大切なのです。