偏食はいけないこと?
「好き嫌いせずに食べなさい!」
給食で牛乳を残したときに、このように怒られた人は多いのではないでしょうか。
たしかに、食べ物を大切にするという点では、偏食をして残すことはいけないことです。ですが、栄養の点でいうと、偏食は必ずしも怒られることではないのではないでしょうか。
というのも、日本人自体の食生活に対する考え方はかなり偏っているからです。
たとえば、アメリカ人が納豆を食べられない、といってもそれで怒る人はいません。ドイツ人が漬物を食べなくても、偏食とはいわれません。
ですが、日本人がチーズやステーキを「食べられない」というと、「偏食はいけません」と怒られます。
なぜ日本人だけが、世界のあらゆる料理を食べなければならないのでしょうか?アメリカやドイツの料理が食べられないからといって、怒られる必要はないはずなのです。
動物の世界に目を移してみると、モグラは昆虫を食べ、ウシやヒツジは草を食べ、ライオンやオオカミは肉を常食しています。食べるものの種類はきわめて少ないわけですが、これらの動物を偏食という人はいません。
どの動物もある一定の食物を食べる性質があり、それを食性といいます。
それぞれの動物によって食性が異なるように、人間もまたさまざまです。
氷の上に住むイヌイットの人たちは植物性の食物はほとんど食べず、カリブー、アザラシ、セイウチ、白クマなどの肉を食べています。
また、パプアニューギニアの高地人は、動物性の食物をほとんど食べず、一日に一キロ以上ものサツマイモを食べるといいます。また、タイのアカ族は一日に一キロ以上の米を食べ、アンデスの高地に住む人たちは朝から晩までジャガイモを食べ、他の食物はきわめて少ないといいます。
アフリカの人たちはアフリカの人たちなりの、ヨーロッパの人たちはヨーロッパの人たちなりの特有の食生活をしています。このように考えてみると、それぞれの民族はまさしく偏食なのです。それぞれの民族は、自らの住む風土に適した食物を偏食しています。
むしろ世界の中で、何でも食べてバランスをとっている民族なんているのでしょうか。
私たち日本人も、日本の風土に適した食物を偏食すべきではないでしょうか。それが本当の意味でのバランスというものだと思います。